三枝匡四部作を読んだ後に、最強のデータ分析組織を読んだ感想

↑を読んだ後に、↓を読んでみた。
最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか

最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか

要約すると、データサイエンティストチームがボトムアップで会社に対する貢献度を高めていった話。
データサイエンティストが持つマインド、行動規範、行動目的としては、よくできている。
ただし、その範囲を逸脱していないので、データサイエンティストが自身の業務で
所属している会社に対する利益貢献を最大化するための指針としては使える。
言葉を選ばずに言えば、データサイエンティストが専門バカにならないために読むべき本と言える。

ただし、この本に書かれている内容から読み取れることは、
データサイエンスを活かした競争力の強化をする際の大阪ガスの経営陣(上級管理職と言い換えてもいい)の
リーダーシップの不在が気になった。
言い換えると、経営者がこの本を読んで、この通りのチームになってもらいたいと
データサイエンティストのチームリーダーに依頼するのは明らかな誤り。
経営者は文字通りトップなので、トップダウンで物事を進めるべし。

というのは、データサイエンスもスキルの一つでしかなく、
そのスキルをどのような形で活かすかということを考えるのも経営の一部であるため。
少し具体化すると、経営レベルでやるべきことは、利益を出すという大原則からスタートして、
そのために、行動方針を明らかにし、そのための最適な組織構成にし、
利益を出すために各人が何をするべきなのかというタスクを明確にし、それを徹底させることにある。
もう一歩具体化して、QCT(Quality, Cost, Time)の観点から言うと、
その時、着目している項目に対して密度の高いアプローチを
損益を直接負っているラインで全体で向上させるときに、データサイエンティストも加わえているという状態にするべき。
例として、競合に勝つために今一番伸ばさなければならない要素が、Timeであると仮定する。
1. 過去の資料探しをドキュメント検索システムを導入することで、高速化する→IT
2. 業務フローを見直して、多少の精度(Quality)は落ちるが、重要度が高くない項目の確認を削る。→仕組み(ワークフロー)
3. 市場のニーズを把握するために、統計情報を要約したものを自動で集計および表示し、それをたたき台に更に営業戦略を練る。IT+仕組み

で、何が言いたいかというと↑の1.や3.のようなアウトプットがデータサイエンティストから
多く出るような「仕組み」を作るのが上級管理職の役割。
もし僕が上級管理職なら、データサイエンスチームなんぞつくらず、
データサイエンティストを損益に直接関連するラインに所属させて、
「君(データサイエンティスト)のスキルをつかって、時間を短縮する案を出して、実行して、成果を出せ」 と命じる。
なおかつ、損益に応じて、インセンティブを設定する。つまり、改善効果が大きいと収入が増えるようにする。
間違っても、間接部門として社内SEの延長線上の業務改善チーム扱いにはしない。